亜鉛を含む排水に関する規制について

2022年7月19日

 お久しぶりの投稿になります。今回は、昨年12月に改正された亜鉛を含む排水(処理)に関する法令のお話をさせて頂こうと思います。例によって法令等の解釈の正確性、最新性は保証致しかねます。根拠としている通告等の情報は文中や末尾にてご紹介致しますので、実際に施行等を行う際には必ず事前に関連省庁等の行政機関にご確認下さい。

前提:水質汚濁防止法・一般排水基準について

 そもそものお話になりますが、(重)金属類等の人体に影響のある物質の含まれる排水については、「水質汚濁防止法」やその他の法令によって厳しく制限されており、その基準値として「(環境大臣が定める)一般排水基準」という基準が存在します。(過去には一律排水基準とも呼ばれていました)

 水質汚濁防止法や一般排水基準については弊社のホームページ内に設置した「建設工事に伴う濁水の排水基準について」のページでご紹介しております。地味に弊社のホームページの中で一番アクセスして頂いているページで、このブログでもいずれその話をするエントリーも作ろうかと考えております。

亜鉛の一般排水基準について

改正前(2021年12月10日以前)

 亜鉛(並びにカドミウム)に関しては、一般排水基準(一律排水基準)の策定とその強化の際に、直ぐには対応しにくい業種に関して暫定処置が設定されて来た経緯があります。今回は亜鉛のケースについてのみのお話をさせて頂きます。以下は環境省のホームページにおける最新の通達に関するページからの抜粋です。

参考:「排水基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令」の公布について

 水質汚濁防止法による亜鉛含有量(以下「亜鉛」という。)については、平成18年12月11日に一般排水基準を5mg/Lから2mg/Lに強化した際に、この基準に直ちに対応することが困難な10業種について、5年の期限を設けて暫定排水基準を設定しました。

 その後、順次暫定排水基準の見直しを実施し、現在は3業種について暫定排水基準を設定しています。

2022.9.24 「排水基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令」の公布について

 上記で言う「現在」は2021(令和3)年9月24日であり、その当時に亜鉛を含む排水に関して暫定処置の対象であったのは「金属鉱業」、「電気めっき業」、「下水道業(の一部)となっておりました。

 なお、その際の亜鉛の暫定排水基準は「許容限度 5mg/L」でした。(一般排水基準における亜鉛の基準は「許容限度 2mg/L」)

 許容限度とは(この場合)リッターあたりに含まれていても違反ではない値で、値が小さいほど基準が厳しいことになります。

 その暫定処置が2021(令和3)年12月10日に満了となり、翌日の2021年(令和3)年12月11日より新たな暫定処置が設定されて施行中です。

改正後(2021年12月11日以降)

 2021年(令和3)年12月11日より、亜鉛の特定業種への暫定排水基準が改定されました。主な改定内容は以下の通りです。

  • 金属鉱業」、「下水道業(の一部)」に関しては暫定排水基準の対象外とし、一般排水基準に移行する
  • 電気めっき業」に関しては、暫定排水基準を「許容限度 5mg/L」から「許容限度 4mg/L」に強化の上、暫定排水基準適用期間を2024(令和6)年12月10日まで延長する

参考:
「排水基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令」の公布について
排水基準を定める省令等の一部を改正する省令の一部を改正する省令の概要 (PDF)

亜鉛の暫定排水基準表

 亜鉛の暫定排水基準が設定されている(又はされていた)特定10業種について、現状を簡単な表にまとめてみました。以下の通りとなります。

亜鉛の暫定排水基準表
亜鉛の暫定排水基準表

弊社製品「ミズコシタロウ」による亜鉛の除去について

 弊社ではフィルターろ過による工事濁水を中心とした濁水ろ過システム「ミズコシタロウ」を販売、レンタル・リースを行っておりますが、過去に亜鉛除去用にミズコシタロウを中心にしたシステムを納品しておりますのでご紹介させて頂きます。

 ただし、発生する排水の性質等により、亜鉛除去をお望みのお客様全てに当てはまる処理方法とは限りません。弊社ではろ過対象の排水・濁水等を送って頂けば、ミズコシタロウによるろ過の可否判断やご提案も行っておりますので、是非お気軽にご相談下さい。

亜鉛含有排水処理システム
亜鉛含有排水処理システム

 システムは足場材の洗浄を行った際に、足場についている泥だけではなく亜鉛・鉄が洗浄後の水に混入して処理に困っているとのご相談を受け構築致しました。下にシステムフロー図をご紹介します。

亜鉛処理システム フロー図
亜鉛処理システム フロー図

 洗浄水をPAC(ポリ塩化アルミニウム)にて凝集して汚泥、亜鉛等をフロック化させ、ミズコシタロウのフィルターでろ過処理し、ろ過後の水はpH調整を行った後に再度洗浄業務に用いるというリサイクルシステムです。ろ過された汚泥等の塊は脱水機により更に含水率を下げ、天日乾燥後脱水汚泥として産業廃棄物処分を行っています。

 排水を全量廃アルカリ等で処分してしまう事を考えると、処理水を再度足場材の洗浄水としてリサイクル出来ていること、ろ過された亜鉛や鉄を含んだ汚泥も脱水機や天日乾燥で出来る限り容積を小さく出来る事でトータルとしてコストの節約にも繋がりますし、何より法令に従った運用が可能になります。

 PACと同時に添加される苛性ソーダに関してですが、亜鉛は特定のpHで水に溶け込んでいるものも析出・沈殿を起こすとされています。析出すればPACによる凝集効果がより期待出来ますので、その為に添加しております。ろ過水は前述の通り再度pHを調整し、中和して放流等を行っております。

このシステムの導入の結果ですが、未処理の排水中の亜鉛濃度が76mg/Lだったのに対し、処理水の亜鉛濃度は0.03mg/Lと十分に亜鉛を除去したといえる結果となり、今現在もご利用頂いております。(亜鉛の排水基準は本件のお客様の場合、「許容限度 2mg/L」です。)

より詳しい情報は下記の弊社ホームページを是非御覧下さい。

亜鉛を含んだ洗浄水の排水システム